【SPECIAL INTERVIEW】Juan De La Rubia/ファン・デ・ラ・ルビア
6月1日(土)のオルガンリサイタルを控え、既に新潟入りし、りゅーとぴあでオルガンの調整、リハーサルにあたっている世界遺産サグラダ・ファミリアのオルガニスト、ファン・デ・ラ・ルビアさん。専属オルガニストの山本真希が、お話を伺いました。
リサイタル前半に演奏する16~17世紀のスペインのオルガン音楽を心から愛しています。
―今回のプログラムについてお聞かせください。
ルビアさん:リサイタル前半はスペインの音楽を選びました。私にとってスペインの音楽は、心の深いところで感動を覚える音楽であり、この素晴らしい音楽をとても誇りに思っているからです。特に16世紀、17世紀のスペインのオルガン音楽が私はとても好きです。
私はバレンシアの近くの町の出身ですが、町は戦争で多くが破壊されてしまったためオルガンがなく、幼い頃にオルガンを聴く機会はありませんでした。両親に連れられてイタリアやフランスを旅した時、各地でオルガン演奏を聴くことができてとても感動したのを覚えています。家に戻ってから、もっとオルガンを聴きたいと両親にねだり、両親が私のために探してくれたのがカベソン、エレディア、ブルーナといった16世紀、17世紀のスペインのオルガン音楽の録音でした。これが私にとってスペインの伝統的なオルガン音楽との最初の出会いで、この特別な経験から私はこの時代のスペインの音楽を心から愛しているのだと思います。
バレンシアの風景
ルビアさん:グリーディーもとても素晴らしい音楽です。今回演奏する「10のバスクのメロディー」はオーケストラの作品ですが、オルガン用に編曲して昨年夏、バスク地方のサン・セバスチャンでの音楽祭で演奏しました。バスク地方の人々は誰でも知っている伝統的なメロディーを用いた作品で、バスク地方独特の民族性が感じられる作品です。
後半は私が好きな他の分野の音楽を選びました。もちろんバッハ、そしてその偉大なバッハを敬愛したメンデルスゾーンと、フランスのロマンティックな音楽をお聴きください。
子どものころの合唱団での経験が即興演奏に役立っています。
―プログラムにはご自身の即興演奏もあります。
ルビアさん:私は子供のころ、合唱団に所属していました。家に帰ったらお気に入りのメロディーをキーボードで弾いてみるのが好きでした。ある時、そのメロディーに左手で和音をつけて弾いてみると、もっと素敵な音楽になることに気付きました。その時見つけた和音は、ドミソとシレファの2つの和音でしたが、その2つの和音を使ってあらゆる歌の伴奏を試みました。
そしてまたある時、シレファの和音にもう一つソの音を加えてみると、もっと素敵な響きになることに気付きました。
これはささやかな出来事ですが、当時の私にはサッカーで遊ぶのと同じくらいとても楽しいことで、これが即興演奏のスタートになっていたのだと思います。
ルビアさん:当時、将来即興演奏を学ぶとは全く思っていませんでしたが、子供のころ、たくさんのメロディーとハーモニーを聴くことが出来る合唱に親しんだことは、即興演奏の技術を発展させていくためにとても重要な経験だったと思います。
即興演奏の習得は、外国語を習得する過程に似ています。語学は単語を覚えて、それらを組み合わせて短い文章を作り実際に使ってみる。話すことと聞くことでスキルを磨きます。
私は音楽においてこのような小さな感動体験を積み重ね、長い年月をかけて、芸術的な言語を使うスキルを磨きました。
大聖堂にふさわしい大オルガンとフランスの名工のオルガンが設置される予定です。
―サグラダ・ファミリアのオルガンはどんなオルガンなのでしょう
ルビアさん:現在はコア・オ-ルガン(歌の伴奏に使用する小型のオルガン)のみで、大型のオルガンはありません。オルガンの製作者はブランカフォルト。スペインの2つの重要なオルガン製作会社の一つです(もう一つはりゅーとぴあのオルガンを製作したグレンツィング社)。
サグラダ・ファミリアは2026年に完成される予定で、その後、大型のオルガンの建造が予定されています。
また、バルセロナには19世紀のフランスの名工カヴァイエ=コルが製作したオルガンが設置されている学校があります。残念なことにこのオルガンはこれまでほとんど使用されていませんでしたが、この貴重な素晴らしいオルガンを活用するために、サグラダ・ファミリアのクリプト(地下聖堂)に移設されることが決まりました。サグラダ・ファミリアの完成後、大聖堂にふさわしい大型のオルガンとカヴァイエ=コルのオリジナルの美しいオルガンが新たに設置、移設される予定です。
スペインの音楽と相性抜群のりゅーとぴあのオルガンを楽しみにしています。
―新潟の皆さんへのメッセージをお願いします。
ルビアさん:バルセロナにあるサグラダ・ファミリアのオルガニストとして、大変美しいオルガンで演奏する機会に恵まれたことを嬉しく思います。今回の新潟公演は、私にとって初めての日本での演奏会であり、スペインの音楽と相性抜群のりゅーとぴあのオルガンで、スペインの素晴らしい遺産である音楽の一端を新潟の皆さんと分かちあえることをとても光栄に思います。
そしてヨーロッパの偉大なレパートリーであるバッハ、メンデルスゾーン、トゥルヌミールのオルガン作品と私の即興演奏をお聴き頂きます。素晴らしいオルガンで演奏出来る日が待ち遠しいです。