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Special interview 長富 彩さん(後編) – ベートーヴェンは永遠に遠く、常にそばにいる特別な存在

Special interview 長富 彩さん(後編) – ベートーヴェンは永遠に遠く、常にそばにいる特別な存在の画像
(C)井村重人

Special interview 長富 彩さん(後編)

9/16(木)にリサイタル を行う長富 彩さん。ロング・インタビュー後編をお届けします。(前編は こちら から)
難関校に入学・卒業し、いよいよ海外留学へと羽ばたいた長富さんを待っていたのは、どのような経験だったのでしょうか?

《おおらかな時間が流れるブダペストと、ハングリー精神に満ちたニューヨーク》

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2006年ハンガリーのセンテンドレにて

―― 高校卒業後はブダペスト(リスト音楽院)~ニューヨークへと留学されました。

長富さん ブダペストとニューヨーク。そのふたつの街は大きく違っていました。
ブダペストでは時間はおおらかに流れ、ニューヨークでは怠けていては生き残れないようなハングリー精神に満ちた時間に追われていました。

ブダペストにいた頃は、高校卒業したばかりで留学したことの意地もあり、あまり日本人の集いには参加せず、ただただ一人で音楽と向き合っていたんです。レッスンで先生からもらったアドバイスに必死で食らいつく日々でした。

ニューヨークでは、受け身では成立しないレッスンでしたので、ピアノへの向き合い方がガラッと変わりました。自分から掴みにいく。自分から発信する。そうしなければ何かを得ることができない、それが私にとってのニューヨークでした。

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2009年マンハッタンでレッスンの後

《ベートーヴェンは、永遠に遠く、常にそばにいる。そんな特別な存在です》

―― 留学先で得たものは。

長富さん ハンガリーではリストや他の作曲家も学びましたが、何を一番勉強したか、それはベートーヴェンです。

高校時代、私は感性を育てていただいた分、基礎をなおざりにしていた時期があって、それをはっきりと指摘されたことがあります。ダブルレッスンの先生にベートーヴェンを聴いていただいた時に、理論的に聞かれたことにちゃんと答えられなかったのです。

その時に、「彩ちゃんは表現は素晴らしいし正しい表現をしているのに、なぜそう弾いたのかを言葉にできない。感覚だけで弾いているから。ベートーヴェンは特にそれでは行き詰まるよ。ハンガリーで習うジョルジュ・ナードルはベートーヴェンも得意とする教授だから、しっかり鍛えてきてもらうと良いよ」と言われました。

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2007年ハンガリーの友人宅でチェロを習う

―― それで留学先でベートーヴェンを本気で学ばれたのですね。

長富さん はい。ベートーヴェンは楽譜に多くの正解やルールがあって、その中で個性を出していくことへの不安が当時はありました。今ではそれこそがベートーヴェンと向き合う喜びと感じています。

帰国後の2016年にはオール・ベートーヴェン・アルバムをリリースしました。アルバム制作にあたって、ベートーヴェンともっと近付きたくて、もう一度ハンガリーの恩師の元へ行き、改めてベートーヴェンについて学び直しました。

ウィーンのベートーヴェンゆかりの場所も巡ったんです。おかげでベートーヴェンがより大切な作曲家になりました。私にとってベートーヴェンは、永遠に遠く、そして常にそばにいる、そんな特別な存在です。

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久々にハンガリーの恩師のもとへ、ベートーヴェンを習いに

《憧れのりゅーとぴあで演奏できる幸せを感じながら、精いっぱい頑張ります!》

――  9月にりゅーとぴあでベートーヴェン三大ピアノ・ソナタ「悲愴」「月光」「熱情」を演奏されます。

長富さん 私はベートーヴェンのテンポ感にこだわりを持っています。速く、遅く、などさまざまな指示がありますが、同じ速くでも奏者によって変わってきます。私は作品の背景にあるベートーヴェンの感情や、当時の楽器について研究し、また自分自身の感情や人生経験と重ねて、自分なりに彼のテンポ感に近づこうと努めてきました。

とりわけ「悲愴」の第2、3楽章はすごく考えた曲ですね。お客様には時代背景を想いながら聴いていただくのも良いですし、何も考えずに目を閉じて聴いていただくのも彼の息吹を感じられるかなと思います。

ベートーヴェンの耳の聴こえ方がどんな感じだったか、彼の苦しみはどこにあったか、弾き手として最大限研究し音にしていきますので、リサイタルで伝われば嬉しいです。

―― 新潟市は初めてなんですよね?

長富さん 幼いころ両親の本番があり新潟市に行ったことがあるようで、色々と話を聞かせてもらっています。昨年の冬には魚沼の豪雪を経験しているので、夏の新潟市を訪れるのが楽しみです!

―― 最後にメッセージをお願いします。

長富さん 初めて新潟でリサイタルをさせていただきます。憧れのりゅーとぴあで演奏できることを幸せに感じながら、厳格な、しかし弱さも残念なところもある、人間味あふれるベートーヴェンを精いっぱい奏でたいと思います。

コロナ禍ではありますが、たくさんの方と会場でお会いできますことを、楽しみにしております!

―― ありがとうございました。

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