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「子どもたちへの”祈り”のような気持ちがあります」藤田 貴大さん(マームとジプシー主宰、演劇作家)インタビュー

開催中止について

8月18日(水)11:30、15:00開演で予定しておりました『めにみえない みみにしたい』新潟公演につきまして、新型コロナウイルス感染拡大の状況を鑑み、公演の開催を中止させていただきます。楽しみにしてくださったお客様には、大変ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。深くお詫び申し上げます。

チケットの払い戻し等の手続きにつきましては、こちら(PDF:110KB)をご確認ください。なお、ご購入のチケットを、りゅーとぴあ2Fインフォメーションや公演日に会場へお持ちいただいてもその場でのご返金はいたしかねますので、あらかじめ、ご了承をお願いします。

2021年8月16日 (公財)新潟市芸術文化振興財団

 

すでにチケットの予定販売枚数を終了した「めにみえない みみにしたい」。
子どもから大人まで一緒に楽しめる演劇作品をつくる注目の演劇作家・藤田貴大さんにお話を伺いました。

舞台写真撮影:細野晋司

「子どもたちへの”祈り”のような気持ちがあります」藤田 貴大さん(マームとジプシー主宰、演劇作家)インタビューの画像

―幅広い年代が一緒に楽しむために工夫したことはありますか?

藤田:普段とトーンが変わらないように心掛けているんですけど、そのなかに大人が懐かしいと思うような「遊び」の要素を取り入れたり、シャボン玉を劇中で使用したり、会場全体を巻き込むような演出を取り入れました。

―子ども向け企画はご自身の創作にも影響はありましたか?

藤田:「めにみえない みみにしたい」(以下「めみみ」)の最初のツアー(2019年)では、ものすごいたくさんの人に出会ったし、あらためて「普段の作品では何をやってたんだろう」って思ったんです。

子ども向けとなると、客席をすごく気にすることになるんです。みんなが飽きていないかとか、客席との駆け引きを役者も考えなきゃいけないし、チーム全体でもものすごく考えなきゃいけないんですね。

そこでふと我に返ると、普段ただ見せるだけの演劇を作っていたんじゃないかと思って。
子ども向け以外の演劇をつくる時も、考え方や観点が変わりました。この企画を通して、今も勉強しています。

「作品を見に来ちゃいけない人」なんていないと思っています。

―今回は2歳未満も膝上ならOKとなっていますね。

藤田:そうですね。クレジットとしては、「4歳以上推奨」としています。どういう言い方がよいか、制作とも何度も話し合ってそうしました。

4歳以下の子たちが作品を理解できるかどうか分からないですが、僕の作品を見に来ちゃいけない人なんていないと思っています。

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―実際に赤ちゃんが泣き出しちゃったことはありますか?

藤田:ありますね。たとえ泣き出しちゃった子がいたとしても、途中で出入り自由にすればいいと思うし、そういうことができる空間を目指しています。こちらからのほんの少しのケアや歩み寄りがあるだけで可能になるんだと思います。

今回の企画は特に、いい作品ができたからオッケーという訳でなくて、誰もが演劇に来やすい環境、どんな人がいたとしても空間や時間を成立させることが大事だと思っています。

以前のツアーで、身体的にハンディキャップのある子がお母さんと二人で観に来てくれた回があって、途中出入りをしながらも最後まで見てもらえたことがありました。作品の途中で、その子が大きな声を出しても、お客さんも含めてそのことを許容している感覚があって、それはとても嬉しかったですね。

客席の後ろにいる大人は、子どもたちとパフォーマンスと一体化した風景を観る

―前回の上演を娘さんとご覧になった方が、娘さんがリラックスして見ていたこと、ご自身はいつもマームとジプシーの作品は集中してみるのに、娘さんの様子をみたり作品を観たりとゆったりした時間を過ごしたとお話されたことが印象に残っています

藤田:舞台を見ている子どもも含めて1つの風景を作りたいなって思ったんです。だから、役者と同じ目線に子どもたちが座れる席を作りました。子どもたちの様子を後ろから大人たちが見ていることが重要な気がしていて、パフォーマンスと子どもたちが一体化した風景を僕自身が観たかった。

きっと、順当にいけば僕らが先に死んで、そのあとの未来はその子たちしか見れないわけです。だから、その子たちが僕の作品を経験して、その先に作るものに期待しているんです。何を作るかっていうのは、演劇とは限らないと思います。「家庭」や「お店」を作る人もいるかもしれない。みんな何かしらを「つくる」人になると思うんですよね。

後ろから見ている大人たちはパフォーマンスと子どもたちの姿を重ねて、何十年も先の未来を想像することになると思います。そんな時間を作りたいと思って、衣装のsuzuki takayukiさんと音楽の原田郁子さんをお誘いしました。演劇だから、物語を成立させるのは大前提にあるんだけど、裏テーマとしては「祈り」のような気持ちがあります。

「子どもたちへの”祈り”のような気持ちがあります」藤田 貴大さん(マームとジプシー主宰、演劇作家)インタビューの画像

―過去に藤田さんの作品を観たお客さんがお子さんを連れて観に来てくれることもあるのではないでしょうか。

藤田:今回の企画をやりたいと思った理由の1つですね。

僕らは演劇をずっと作り続けて、劇場で“待ち合わせ”しているという職業ですが、本当は演劇を観に行きたいけど行けなくなった人たちがまた来れる場を作っていくことも一つの大きなコンセプトでした。

良い作品を持っていくだけが僕のツアーの仕事じゃなくて、風通しのいい環境自体も持っていきたいですね。
これだったら演劇みれるよねとか、子ども連れてもみれるじゃんということを実感してもらいたいなってと思います。

何かを探しに来るという動機があるから、その場所で演劇が成り立っている

―今回のツアーは、お客様の感じ方も以前とは異なる点はありますか?

藤田:特に「めみみ」は外に出て目に見えない何か、耳したい何かを探しにいくお話で、それは2019年のツアーよりも意味合いがぐっと増してきているなと思っています。

今の時代、簡単に出会える世界じゃなくなってきているし、表現だけでなく、感動することも含めて簡単にそれを手に取れる時代じゃなくなってきました。でも、上演ができたら、人は家を出て何かを見に来る。何かを探しに来るという動機があるから、その場所で演劇が成り立っていることがある。そこが前回のツアーと違ってくる部分かと思っています。

「子どもたちへの”祈り”のような気持ちがあります」藤田 貴大さん(マームとジプシー主宰、演劇作家)インタビューの画像

―新潟のお客様へメッセージをお願いします。

藤田:新潟はとにかく思い入れが深いです。初めて結構深く仕事をしたのも新潟だったと思います。ワークショップもコツコツしたりとか、一人で行くことも多かったし。

あと、新潟は食べ物がもう、すべて、パーフェクトにおいしいんです。一方で、新潟の人のおいしいアピールもすごくて(笑)。

「水と土の芸術祭」に参加した時に、新潟市の水の歴史をすごくリサーチしたんです。新潟は名前に「潟」の字があるように、水浸しの土地だった。そこで、親子5代にかけて水路を確保したことや、一本の川を通すために孫や曾孫の世代まで人生を全うしている家族がいたことも現地に行って調べたりしました。そんな歴史をみると新潟の人の食べ物へのプライドは当然なんだなと思いました。

今回は2年ぶりの新潟なので楽しみです。

 

 

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藤田貴大(ふじた・たかひろ)   写真:井上佐由紀
1985年生まれ。マームとジプシー主宰、演劇作家。2007年にマームとジプシーを旗揚げ。象徴するシーンのリフレインを別の角度から見せる映画的手法で注目を集める。2011年に3連作『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。』で第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2015年、今日マチ子原作の『cocoon』(再演)で第23回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞。演劇作品以外でもエッセイや小説、共作漫画の発表など、活動は多岐に渡る。

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