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【座談会「Le Fils 息子」】感想をりゅーとぴあスタッフが語りあいます

9月29日(水)・30日(木)にりゅーとぴあ・劇場で上演される「Le Fils 息子」。これは演劇なのか?ドキュメンタリーなのか?「家族」という身近な存在について、きっと誰もが考えずにはいられない本作。家族の生々しい葛藤の物語に、りゅーとぴあスタッフが迫ります!思春期の子を持つスタッフらが脚本を読み、切なさで胸をいっぱいにして思いの丈を語り合いました。

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何か殴られた衝撃があって、でも殴っていたのは自分自身だった

Hさん   本作は、両親の離婚によって傷ついた17歳の主人公・ニコラと、彼に向き合う家族の物語ですが…。戯曲を読んで、ズシンときてしまったんですよね。想像以上、という気持ちでした。

Tさん    僕は自分の子どものことをすぐ連想したけど、ピエール(主人公の父)のお父さんのエピソードが出てきた時に、自分の父親を連想しました。読んでいて、何か大きい鈍器とかで殴られた衝撃があって、でも殴っていたのは自分自身だったって思うような作品で…。自分を映し出す鏡みたいな作品なんですよ。結局ピエールが自分と重なってしまったんです。

Hさん   親になった方、なりたての方にもぜひ観てもらいたいですよね。まるで、自分自身を見ているような。

Tさん    そうですね。ブーメランのような作品ですね。父親として、あまり叱らないようにしようと思っていても、つい言いすぎてしまうことってありますよね。例えば、自分の子どもが誰かに暴力をふるったり何か悪いことをしたときに、ついこっちがカッとなって怒ってしまうこととかあるでしょう?そういう局面が作中でも出てきていて、それがもう、僕自身を見ているような気がしてしまって。多分すべての人が自分に置き換えて見えるようなところがいっぱいあると思います。

Mさん    私は心に響くものがあるのと同時に、読むのがつらい場面がいくつもありました。親ではない私でさえすごくつらいから、実際に子を持つ親の方が観たら、どんなに切ないんだろうって。そのつらさと向き合うのが、この作品の価値と思いましたし、(作品が)刺さるんじゃないかなって思ったんですよね。

Eさん    舞台でぜひ味わいたいって思いましたね。戯曲を読むと、映画にも舞台にもなりえる作品だとも思ったので、ラディスラス・ショラーさんがどんな演出にするんだろうって気になります。

Hさん   私は物語の冒頭から、いきなり心を打たれました。今月、自分の息子が誕生日を迎えるんですけど、これから作中のニコラと同じ年齢になっていくんですよね。反抗期が始まってしまっていて、今はもう自分に見向きもしない。この、身に迫る感じというのでしょうか?私も息子に手をこまねいているからか、オープニングからつかまれちゃうな。最後はもう、泣かずにはいられませんでした。

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物語を思い出して頭を抱えるスタッフ。

「こんな思いをしているのは私だけじゃない」と、孤独から引き離されます

Hさん   岡本圭人さんが作者のフロリアン・ゼレールさんにリモートでインタビューしていますよね。ゼレールさんが、「日本とフランスで物理的な距離があるのにもかかわらず、私たちが共感できることを思い出させてくれて嬉しい」ということをおっしゃっていました。

Mさん    岡本健一さんも「私達は様々な状況の中で生活していますが、これから生きて行く世代の為にも、出来る限り沢山の方々に、この作品を伝えなければならないと思っています」とコメントしています。切実な物語だからこそ、この作品が描く大事なテーマを伝えたいという意思を感じます。

Hさん   作品を作る・伝える方々の役割の一つに、普段生活している人では「言葉にしにくい、表現しきれない想い」にちゃんと光を当てて、それを作品として形にすることがあるんじゃないかなと考えていて。舞台の作品を通して、自身の気持ちと照らし合わせられる機会がある。作品を通して「こんな思いをしているのは私だけじゃない」という孤独から引き離されると思います。

Mさん    ゼレールさんもパリ初演を終えて、観客が終演後に自分たちの家族の物語を語り始めたのが嬉しかったとお話されています。また、作品を鑑賞するだけでなく「自分の家族の経験を語らずにはいられない」という次のアクションに繋がって、自身の経験を分かちあえるっていうことは素晴らしいですよね。作品を観た方々が想いを言葉にして伝えたり、深く考える機会になるんじゃないかなと思いました。

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Eさん    ゼレールさんはなかなか話題にしにくいことを作品にして問題提起をしていますね。見てみぬふりはできない問題について踏み込んでいる強さを感じます。あえて作品として表現して立ち向かっている勇気が素晴らしいと思いました。

Hさん   そういう問題に光を当てているからこそ、多くの方の共感を引き出しているのかな。

Eさん    舞台上で営まれている生活は「何か通じるもの」を感じさせる作品なんだと思います。この作品が若い世代にどう受け止められるのかと。これは親という立場になっている方とは異なる受け取り方をするのではと思いました。

Tさん    親の立場の人たちはきっと、「自分も同じようなことをやってしまっていた」という経験を思い出して胸が痛くなることもあるのかな。「自己肯定感」が教育の場や家庭での子育てで重要視されているんだけど、それを阻害する要素が作中で上手く散りばめてある。

Hさん   私は、母親と息子の関わりあいのシーンはデジャブというか。ぎょっとする感じがありました。“個人としての自分”と“親としての自分”がいて、“個人としての自分”を息子に気取られるっていう苦しみを感じましたね。一番悟られたくない息子に“個人としての自分”を見られた母親の様子に、子どもはきっと傷つけられるんだなと。それでも子どもを愛しているという事実に揺らぎはない。身につまされますよね。

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「普遍的かつ悲劇的な作品」これは、わが家の記憶なんだと思います

Mさん    このチラシの裏面にあるコピーが突き刺さりますよね。すごいメッセージだ…。

Eさん   「その愛情は、あなたの子供を救うのに本当に十分ですか?」って、作品を読み終えた今もグッときます。

Hさん    三部作の3つ目なんですってね。

Mさん    前作の「Le Père 父」は、アンソニー・ホプキンス主演で映画「ファーザー」として上映されたのを見たんですけど、舞台「Le Fils 息子」とは違う切り口で、年老いた父と娘が描かれています。「家族」が軸になっているのは変わりないですが、今回はストレートに父と息子の関係を描かれていて、より切実。「悲劇的で普遍的な作品」とチラシに書いてある通りだと思います。

Hさん   骨太な作品だからこそなのかもしれないけど、主演を務める岡本圭人さんがインタビューで「ニコラを救いたい」と熱く話していたのが印象的でした。舞台上でどうニコラを“救う”のかがとても気になります。

Mさん    東京公演が幕を開けて数々の劇評をみても、評判が良いんですよね。特に岡本圭人さんが演じるニコラが繊細で見事だと。自分と重なる役ってすごく難しいと思うし、父親との共演で、ストレートプレイ初主演であり、なかなか難しい要素がある中で演じている。岡本健一さんは「血の繋がった父と息子が織りなす、ある家族の物語を劇場で公然と覗き見てください」って。

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Hさん   鑑賞して終わりにしたくない作品です。終演してからが、お客様にとっての時間になるんじゃないかなと思いました。

Tさん    この作品はもう1回みたくなる作品だなと思って、教訓というか観た人の胸に残して後々生えてくる何かがあると思いましたね。

Mさん    親、子ども、かつて親だった人、子どもだった人など、いろんな立場の人がそれぞれ感じることがあると思います。「鏡のような作品」という話もでたように、自分を見つめなおす機会や気づきがあるっていうことだけでも大きな意味はあると思います。

Tさん    ゼレールさんがインタビューで「私にとって演劇や映画は答えを与える場ではありません。質問を投げかける場なのです」とおっしゃっているように、まさしくそうなんですよね。この作品を観終えた時、きっとスタート地点に立っている。作品を観た方々がこれから先の未来、家族とのコミュニケーションや絆について改めて思いを馳せるきっかけになってくれたら本当に嬉しいです。ぜひ、たくさんのお客様に観ていただきたいです。

 

公演情報

『Le Fils(ル・フィス) 息子』

開催日時:9月29日(水)19:00、30日(木)12:00
※この公演は国および新潟県、新潟市のガイドラインに基づき、客席制限は行わずに開催いたします。
会場劇場
チケット: S席 8,800円、A席 6,800円、B席 6,500円、U25(B席) 2,500円(※)
※公演時25歳以下の方対象(小学生以上)。ご入場時に年齢がわかるものをご提示ください。
※B席およびU25(B席)は見づらい場面が発生する場合がございます。

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