新潟・田上町が愛するソプラノ歌手・小菅文さんに迫る!~ステイ・アット・ニイガタ・コンサート~
新潟ゆかりのアーティスト12組が2日間に渡って出演するステイ・アット・ニイガタ・コンサートは、今年2回目となりました。新型コロナウイルス感染症の影響で、さまざまな思いをされた方も多いと思います。今回「新潟を元気にしたい!」と奮い立って参加するアーティストのうち2組にフォーカスした記事をお届け!1組目は、田上町に愛されるソプラノ歌手・小菅文さんに迫ります。
小菅 文(こすげ あや)さん プロフィール
南蒲原郡田上町出身。小学生の頃は少年野球に打ちこむ。
中学2年生の時に本格的に声楽の道を志し、新潟県立新潟中央高等学校音楽科に進学。卒業後、都内の音楽大学に進学のち、東京二期会での活動を経て新潟に帰郷。現在も歌手活動のみにとどまらず、県央ジュニア合唱団ブレーメンの指導や中学校の合唱コンクール審査員を務めるなど、新潟県内を東西南北かけめぐるアクティブなソプラノ歌手。
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小菅さん「大好きなんです!日帰り温泉」
―休日はどのように過ごしていますか?
小菅さん この前、長岡の「麻生の湯」に行きました!新潟に帰郷してから日帰り温泉にハマっていて、大好きですね(笑)! 新発田や上越にもコンサートに呼んでいただくこともあって、お仕事で行ったついでにその土地の温泉にも足を伸ばしています。
―現在、りゅーとぴあの東響コーラスにも所属していただいています。
小菅さん 超一流の指揮者がその時々にいらっしゃるので、その方たちの音楽をステージの上で感じたい、触れたいと思って2016年から参加しています。東京二期会オペラ劇場の本公演に合唱で出演していたこともあり、その感覚を新潟でも味わえる機会だなと思っています。
田上町日帰り温泉、ごまどう湯っ多里館からの眺め(撮影:小菅文)
歌で生きて行く。テレビの前で涙したあの時から、今。
―声楽との出会いや魅力は何でしょうか?
小菅さん 「言葉にならない気持ちに触れること」ができる。それが音楽、声楽の魅力かと思います。言葉にできないけれど、音楽を聴いていると何かがあふれてきて、自分でも気づかない想いに気づかせてもらえたり…。
小学生の時にミュージックステーションを観て、テレビの前でポロポロ泣いてしまったんです。小谷美紗子さんの『The Stone』を聞いて、とても感動して「自分もこんな風に歌えるようになりたい!」と思って。その後、自分でテープに歌を吹き込んで音楽事務所にデモテープ送ったくらい、歌手になりたいっていう想いはあったんだと思います。本格的に声楽の道を考えたのは中学2年生の時で、「歌うならやっぱり基礎はクラシックかな?じゃあ声楽をやろう!」と志しました。
高校卒業後の進路に悩んだ時、当時の音楽科の先生に相談して「なんにしても基礎がクラシックだから続けるといい」とアドバイスを受け、ひたすら続けてきました。大学浪人することになって、声楽の恩師である故・押見榮喜先生に「あなた真面目すぎるから、歌ばっかりやっていたら頭おかしくなるから!車の免許取りに行ってきなさい」と励ましていただき、車の免許を取りました(笑)。車の免許をとってからは実家の軽トラでレッスンに通っていましたね。先生のおっしゃったとおり、車の運転はとても良い気分転換になりました。浪人時代も、今思えば自分自身と歌に向き合って考える時間ができて良かったと思っています。
恩師である故・押見榮喜先生と、高校時代の小菅さん
―りゅーとぴあで特に印象に残っている思い出はありますか?
小菅さん あれは忘れもしない、2008年の新潟県新人演奏会に出場した時ですね。情けないことに、恋煩いで急性胃炎になってしまったんです…。出場の前々日まで点滴を受けて、最終的に出演したのですが思うように力を発揮できず、苦い思い出になりました。その時、お医者さんに「人間は機械じゃない」ってピシャリと言われて…。体調管理をきちんと心がけるようになりました。
積年の想いを胸に、去年の第56回新潟県音楽コンクール本選に出場して、やっと万全な状態でリベンジを果たせました!
「やっぱり私、人前で演奏したい!」…その思いに、コロナ禍で気づきました
―コロナ禍での音楽活動の変化はありましたか?
小菅さん 新型コロナウイルスが流行し始めた当時、感染拡大防止のために歌のお仕事をゼロにしたんです。たくさん考える時間が生まれて、改めて「私、演奏がしたい!」と以前より強く思うようになりました。その気持ちが原動力となって、新潟県文化祭に応募して動画制作してみようと思ったり、今まで経験しなかった新たなチャレンジに繋がりました。
今年のお正月には、初めてのインスタライブでシューベルトの弾き語りをして、今までにない新たな緊張感を持ちました。でもやっぱり一緒の空間で共演者やお客様と共有する音楽に勝るものはないと再認識したんです。
「余白」を歌い手にも聴き手にもあたえるドイツ歌曲
―小菅さん・品田真彦(ピアノ)さんのプログラムでは、ドイツ歌曲(リート)を選曲しています。
小菅さん リートの和音や音楽の運びにすごく魅力を感じるんです。お互いの見せ場を引き立て合うという、ピアノと歌手の両方がいて成り立つ印象があります。
あと、「余白」があるのが魅力だと思います。オペラだと物語の役になって、その役としてお客様に見えるように意識しますが、リートの場合はお客様が考えたり感じる「余白」が存在すると思っています。いろんな解釈をお客様にゆだねられるのも醍醐味かと思いますね。
品田真彦(ピアノ)
―今回のプログラムを選曲する上で意識したことはありますか?
小菅さん 最初は「自然」をテーマに、情景がみえる2曲を選びました。コロナ禍に入って、以前より新潟の美しくて雄大な自然に触れる機会が増えて、草木のにおいや風の心地よさを感じたり、夕日が沈む様子をみて「また明日も頑張ろう」ってパワーをもらえたので、お客様にもそのエネルギーを届けたいと思います。
3・4曲目は、ピアニストの品田真彦さんが演奏します。品田さんも田上町出身のピアニストで、新潟県立新潟中央高等学校音楽科の1期生でもあり、偉大な先輩なんです。ぜひご注目ください!
最後の2曲は、コンサートにお越しいただくお客様に「音楽の小さな花束」をイメージして、歌で、かわいらしい花束のプレゼントをしたいと思っています。
音楽にこれから触れる人もずっと浸ってきた方も幅広く楽しめるプログラムになっていますので、楽しんでいただけますと幸いです!
田上町、護摩堂山あじさい園(撮影:小菅文)
どの楽器も共通する「呼吸する」「歌う」音楽
―ステイ・アット・ニイガタ・コンサートの聴きどころを教えてください。
小菅さん “新潟ゆかりの”というのが、大きな魅力の1つだと思います。コンサートというとチケット料金が高く、知らない・わからない曲だったらどうしようと思う方もいるかもしれませんが、コンパクトな時間にぎゅっと濃密なプログラムがどの組も入っているので、気軽に足を運んでいただけると嬉しいです。
声楽を聴きたい方は、ぜひ12日(土)にお越しいただけると充実した時間を過ごせると思います。どの楽器にも通じるところって「呼吸する」「歌う」ことだと思うんですよね。ピアノでも管楽器でも弦楽器でも打楽器でも、もちろん声楽も。その人の音楽で旋律を歌い継いで、その呼吸が結びついていく。そんな中でもダイレクトな「歌」を聴きたい方は土曜日にどうぞ、とオススメします!
―これからの活動、そしてステイ・アット・ニイガタ・コンサートに向けた意気込みをお願いします!
小菅さん 演奏活動を始めて今年で10年目という節目になります。これからも合唱指揮やチェンバロとのコンサート、オペラの企画段階からの参加など、初めてのことにチャレンジする機会に恵まれているので、一つひとつ頑張っていきたいと思っています。
今回のコンサートでは、お客様の心を潤したい、満たされてほしいという気持ちで、心から感謝をしてお楽しみいただけるよう、健康第一で頑張りたいと思います!
「“自然”に触れると目には見えないことを感じることが多くて、だからこそ惹かれるかもしれません。ドイツリートにも、目に見えない想いや感じられるものがあるので、それを体感してほしいです。」と最後に語った小菅さん。可憐な姿に秘める思いが熱く、きっとコンサートでも想いがいっぱい詰まった素敵な花束を受け取ることができるでしょう。
ぜひ、ステイ・アット・ニイガタ・コンサートに足をお運びください!