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名曲誕生の背景に隠された、作曲家同士の“ペイ・フォワード”

女優の蒼井優さん&お笑いコンビ・南海キャンディーズの山里亮太さんという、令和初のビッグカップルの誕生に世間はお祝いムード一色。先日の記者会見で語られた微笑ましいエピソードの数々も話題になっています。一方、りゅーとぴあ音楽企画課・榎本さんには、奥様との間で映画にまつわる苦いエピソードがあるんだとか。そんな榎本夫婦の愉快な(?)体験談も織り交ぜつつ、東京交響楽団 第114回新潟定期演奏会の見どころについて教えていただきます。

クラシック音楽史に残る“ペイ・フォワード”の逸話

 

榎本さん:突然ですが、映画は家族や友達と一緒に見たい派ですか?それとも一人でじっくり派?

 

―本当に突然ですね(笑)!榎本さんはどうですか?

 

榎本さん:みんなと一緒に見る派、と言いたいのですが、昔ちょっと痛い目にあったことがあって…。妻と結婚したばかりの頃、「ペイ・フォワード」という映画のビデオを借りてきて一緒に見たことがあるんです。主演は天才子役として有名だったハーレイ・ジョエル・オスメント。この映画、ご存知ですか?

 

―日本では2001年に公開された映画なんですね。どんな物語ですか?

 

榎本さん:オスメント少年演じる主人公のトレバーは、中学1年生。社会科の授業で「もし自分の手で世界を変えたいと思ったら何をする?」という課題が出て、彼は「ペイ・フォワード(恩送り)をする」と答えたんです。自分が受けた親切や思いやりをそのまま相手に恩返しするのではなく、別の人に親切にしたり思いやりを贈ったりすることで世の中を良くしていこうと考えて、それを実践するんです。それはまるでチェーンのように繋がっていって、思いがけないところまで広がるのですが、トレバーはいじめに巻き込まれて命を落としてしまう。それが報道されると、“善意のチェーン”でつながった人々が次々に花とろうそくを捧げるという、派手ではないですが大変感動的な映画なんです。

 

名曲誕生の背景に隠された、作曲家同士の“ペイ・フォワード”の画像

 

―心に響きそうなお話ですね。

 

榎本さん:ところが私の妻は、こういう淡々とストーリーが進む映画が苦手!で、途中で寝ちゃったんですね。私はそのまま一人で見続けて、もううるうるしながら感動していたわけですよ。余韻に浸っていたら、エンドロールになった途端に妻が起きた。そしてあろうことか、ビデオテープを巻き戻したんです!亡くなったはずのトレバーが、目の前で起き上がってくるんですよ!もうね、感動ぶち壊し。なんてことをしてくれたんだ、と。私の2時間、私の感動を返せ、と。ということで私は、映画は一人で見る派です。断言します。

 

―なかなか強烈なエピソードですね(笑)。ところで、“ペイ・フォワード”と言えば、ヨーロッパ・クラシック音楽史上でも有名な恩送りの逸話があるんだとか…?

 

榎本さん:そうなんです!例えば、若き日のブラームスが世に出るのを助けたのは、先輩作曲家のシューマンでした。ブラームスの才能を称賛し、勇気づけ、世の人に紹介した。やがて大作曲家になったブラームスは、今度はシューマンから受けた恩を、次の世代の作曲家を支援することで世に返して行ったんです。支援を受けた作曲家の一人が、ドヴォルザーク。どうです?心温まる、いい話でしょう。

 

名曲誕生の背景に隠された、作曲家同士の“ペイ・フォワード”の画像
ヨハネス・ブラームス

名曲誕生の背景に隠された、作曲家同士の“ペイ・フォワード”の画像
アントニン・ドヴォルザーク

 

―シューマンからブラームスへ、ブラームスからドヴォルザークへと、“善意のチェーン”がつながれていく。まさに“ペイ・フォワード”、恩送りですね。

 

榎本さん:そんなブラームスとドヴォルザークの心のつながりを、一回のコンサートで味わうことのできるのが 東京交響楽団、第114回新潟定期演奏会 というわけです。コンサートの前半は、ブラームスがピアノ四重奏曲として作曲したものを、のちの作曲家シェーンベルクがオーケストラ用に編曲した「ピアノ四重奏曲第1番」のシェーンベルク管弦楽版を。これ、なかなか劇的に仕上がっています。そして後半は、ドヴォルザークがブラームスの交響曲第3番を聴いて刺激を受けて作曲した、「交響曲第7番」。こちらもしっかりした構成の中に激しさを含んだ、とてもいい曲です。

 

オーケストラを掌握するカリスマ指揮者!1990年生まれの新星、ロレンツォ・ヴィオッティが登場

 


名曲誕生の背景に隠された、作曲家同士の“ペイ・フォワード”の画像ロレンツォ・ヴィオッティ  ©Stephan Dolescha

 

―ちょっと、榎本さん!!!このイケメンは一体誰ですか!?もしかして、今回の指揮者の方ですか…!?

 

榎本さん:そう!こちらが今回指揮を務めるスイス出身のロレンツォ・ヴィオッティ。1990年生まれ、弱冠29歳の新星です。この腕の筋肉の締まり具合もなかなかでしょう。この若さで、世界各地のオーケストラから引っ張りだこ。なんでしょうね、カリスマ性なのかなあ。

 

―榎本さんはこの方の指揮するオーケストラを聴いたことがありますか?

 

榎本さん:もちろん!なかったらこんなに自信をもっておすすめできないじゃないですか(笑)。オーケストラ全体を掌握して、濁りのない明晰で透明感と力強さのある響きを生み出す、素晴らしい才能だと思いました。クラシックの世界にはおじいさん指揮者しかいないと思ったら、大間違いです。この若い天才をぜひ見に来てください!

 

―まさしく、才色兼備を体現しているような方なんですね。ブラームスとドヴォルザークの心のつながりが垣間見える交響曲2曲も楽しみですが、指揮者ロレンツォ・ヴィオッティという人物に対しても強く惹かれますね。

 

榎本さん:実は、ヴィオッティのお父さんも実力派指揮者として活躍していたのですが、若くして亡くなってしまったんですね。親の七光りで生きていけるほどこの業界は甘くないので、息子であるロレンツォ・ヴィオッティにも才能があったことは間違いないんですが、たくさんの人たちが若い彼を助けてきたことは想像に難くありません。そういう人の心の温かさの上に、彼の才能が光り輝く演奏会になるのではないかと、期待しています!!

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