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チャイコフスキーが残した“異様な謎”

音楽企画課の榎本広樹さんにお話しを聞きました。

―― 榎本さん。今日はお願いがあります。

榎本 え?何でしょうか。

―― 先日の榎本さんのブログ、「この秋、熱いチャイコフスキー旋風が吹き荒れる!」が好評でした。アクセス数も多くて。

榎本 うれしいですね。それでそれで?

―― 好評でしたが、「内容についてもうちょっと知りたい」という声もあり、補足をしていただけるとありがたいです。

榎本 かしこまりました。どの辺りを補足いたしましょう。

―― まずは10/8(日)茂木大輔のオーケストラ・コンサートNo.13 チャイコフスキー:交響曲第5番+第6番「悲愴」徹底解説!から。榎本さんはこの公演で、「悲愴」にまつわる異様な謎が解き明かされるかも、と言っていました。

榎本 異様な謎とは何なのか、補足せよというのですね。チャイコフスキーは「悲愴」を自分自身の最高傑作と言っていました。しかしですよ、終楽章があまりにも悲劇的なのです。しかも彼は、「人生に関係があるが、今は言えない」という言葉を残して、初演の9日後に亡くなってしまいます。

―― ふむふむ。

榎本 それも、周りの人たちが、「コレラが流行っているから生水は飲むな」と止めるのを聞かずに生水を飲んで、コレラになったらしいんですね。これって、どういうことなんでしょう?謎すぎます。これまで多くの学者や音楽家たちが取り組んできましたが、謎は謎のまま。

―― 迷宮入りですね。

榎本 そのコールドケースにメスを入れるのが茂木大輔さんです。茂木さんは楽譜と歴史と作曲家自身をめぐる人間関係に深く分け入り、推理する音楽名探偵ですから、どんな解説をしてくださるのか本当に楽しみです。

―― ゾクゾクしますね。そして、茂木さんの公演の一ヶ月後に開催されるのが、11/12(日)ロシア国立交響楽団/チャイコフスキー三大交響曲 第4・5・6番「悲愴」、一挙演奏!です。ちょっと贅沢ですが、茂木オケからのロシア国立とハシゴできるといいですね。

榎本 願わくばそうしていただきたいです。チャイコフスキーの母国ロシアからやってくる、ロシア国立交響楽団による貴重な演奏会です。しかも、第4番、第5番、第6番「悲愴」を一挙に演奏するとは快挙というか、暴挙というか(笑)。

―― 聴く方も大変ですが、演奏する方はもっと大変ですね。体力勝負。

榎本 実はこのコンサート、2年前にも行われて大好評でした。こんな大変なプログラムなのに、指揮者もオーケストラも一切手抜きなし、真剣勝負。で、舞台裏でお話を伺ったら、ベテラン指揮者のヴァレリー・ポリャンスキーさんが、チャイコフスキーに対する尊敬と言いますか、畏敬の念がものすごく強い。

―― 強烈なリスペクト。

榎本 そうなんです。交響曲第6番「悲愴」の最後、音が沈黙の中に消えると、彼はさっと舞台袖に引っ込んでしまいます。普通はお客様の方を向いて拍手を受けるでしょう。なぜだかわかりますか?

―― いいえ。

榎本 ヴァレリーさんは、「拍手はまずチャイコフスキーの音楽に贈ってくれ」という気持ちなのだと。

―― それは素晴らしいですね。尊敬というか、チャイコフスキーへの深い愛情が伝わってきます。

榎本 茂木オケでチャイコフスキーの謎に迫り、ロシア国立でチャイコフスキーへの愛を堪能するのが、今年の秋の楽しみ方かなと。本当はその前に、9/17(日)新潟市ジュニアオーケストラ教室 第36回演奏会でもチャイコフスキーの名曲、交響曲第5番が演奏されるので、3連続でお楽しみいただけるのが一番とは思いますが。

―― わかりました。ところで榎本さん、10/29(日)東京交響楽団 第103回新潟定期演奏会でもロシアの作曲家の名曲が演奏されます。リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」。

榎本 シェエラザードは、アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)をテーマにした曲。絢爛豪華で華やかな色合いに満ちているのですが、その中でもひときわ妖艶なのが、独奏ヴァイオリンで演奏されるシェエラザードのテーマ。このメロディを聴いているだけで、嗚呼、シェエラザードという女性は才色兼備なファム・ファタール、王様にとっての「運命の女」だったのだなあと思います。

―― 魅力的な女性というと、11/23(木)萩原麻未 ピアノ・リサイタルも行われますね。

榎本 あなた次々に宣伝を入れてきますね。萩原さんといえば昨年3月の東京交響楽団新潟定期演奏会にソリストとして登場してピアノ協奏曲を弾いたのですが、コケティッシュかつ魅惑的で、もうね、私も含めてオジサマ達はコロッと。

―― 心を持って行かれました。

榎本 美しくて多彩で、しっとりした音色に魅了されて。それで今度はぜひリサイタルをとなったわけです。ファム・ファタール、運命の女って、ついカルメンみたいな肉食系を想像してしまいますが、いろんなタイプの「有無を言わさず心を奪ってしまう女性」というのがいるんだなあと思いました。今回の萩原麻未ピアノ・リサイタル、メインがシューマンの「謝肉祭」ですからね。その美しい音でどんな物語を描くのか本当に楽しみ。楽しみ。楽しみ。。。

―― 遠い目をしている榎本さんはそのままに、インタビューはこれでおしまいです。ありがとうございました。

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