もぎオケ交響団は「楽」じゃない!
音楽企画課の榎本広樹さんにお話しを聞きました。
―― 榎本さん、よろしくお願いします。
榎本 よろしくお願いします。早速ですが、貴兄はお休みの日、家で「まったり派」ですか? それとも仕事の日にできないことをする「アクティブ派」?
―― アクティブ派です。主に家族サービスですが。
榎本 なるほど。オンでもオフでも楽をせず、自分ががんばることで周りを楽しくさせている。
―― それは言い過ぎです。
榎本 クラシック音楽界にも貴兄のようなお仕事をしている方々がいらっしゃいます。10/8(日)に開催されるコンサートなのですが、オーケストラの名前がちょっと変わっていまして。
―― 「もぎオケ交響団」とありますね。…あれ?普通オーケストラは、「交響“楽”団」といいますよね。
榎本 そう、普通は交響楽団。でもこのオーケストラ、演奏する人たちがぜんぜん楽じゃない。というよりもむしろ大変なので、交響楽団の「楽」という字をとっちゃった。
―― オーケストラが楽じゃないって、どういうことですか。
榎本 その答えは後ほどご紹介します。コンサートの題名は「茂木大輔のオーケストラ・コンサート」。毎年恒例の公演で、今回が13回目になります。副題がついていましてね、「人を知り、時代を知り、音楽を知る、大人のための音楽鑑賞教室」と言うんです。
―― 好奇心をそそられます。特に「大人のための」というところが。
榎本 今この瞬間を時代小説風に書くなら、「ここで男は、目を妖しく光らせた」って書くところなのですが、あ、まずい、一刀両断にされてしまう。茂木大輔さんといえば現代日本における屈指の音楽探偵で、今回のこのコンサートではチャイコフスキーの人となり、人生と時代背景、楽譜の中に秘められたメッセージを解き明かします。
解説しながら曲の一部を演奏し、さらには豊富な映像資料もプロジェクターで投影しながらのレクチャー・コンサートなんです。
―― 今回演奏する曲は?
榎本 チャイコフスキーの輝かしい交響曲第5番と、異様な交響曲第6番「悲愴」の2曲です。茂木さん自身からのメッセージをお伝えしても良いですか?
―― ぜひ。
榎本 『数年前、りゅーとぴあの「徹底解説」シリーズでは同じチャイコフスキーの交響曲第4番を取り上げて、不幸な結婚とパトロンを巡るチャイコフスキーの人生の危機がひそかに反映したのではないかというお話しをいたしました。
今回、この2曲を同時に取り上げるのは、後期3大交響曲のコンプリートを目指す目的のほかに、第5交響曲で彼が至ったひとつの輝かしい完成像としての境地と、従来の交響曲という概念からはあまりにも大きく変質し、異様とも言える姿となった最後の交響曲を連続して聴いて頂く事、その差を、実際の音で比較・体験して頂くことに、深い意味があると考えるからです。
「悲愴」交響曲は、はたして交響曲なのか、何かのストーリーを持っている物なのか、「人生に関係があるが、今は言えない」という謎めいた言葉を遺して初演の9日後に亡くなってしまったチャイコフスキーの真意は、今でも闇の中です。
いつものように事前の解説演奏、演奏中はリアルタイムに背後のスクリーンに鑑賞をサポートする情報を投影しながら進めて参ります。』
…とのことです。どうです、そそられますでしょう?
―― ええ確かに。このコンサート・シリーズ、目からうろこのレクチャーと同時に、毎回テーマとして取り上げた曲の全曲演奏が一つの特徴でした。今回全曲演奏するのはどちらの曲ですか? 交響曲第5番か、第6番「悲愴」か。
榎本 どちらも。
―― 2曲とも解説して、2曲とも全曲演奏?
榎本 例えて言うなら「カツ丼」と「うな丼」のコンボみたいな。
―― これは大変です。やっぱり「もぎオケ交響団」は楽じゃない。
榎本 茂木さんはNHK交響楽団の首席オーボエ奏者で、同じN響メンバーを中心に都内の各オーケストラで活躍する才能と知識欲にあふれたメンバーが集結します。こんな大変なコンサートにわざわざ参加するなんて、すごいですよね。
―― 茂木さんだから集まってくるのでしょうね。
榎本 メンバーも、お客様も惹きつけてやまない茂木さんに、憧れを覚えます。私もそうありたいものです。だけど、実際の私はどうも、いじられキャラなんですよね…。(遠い目)
―― いじられキャラは、愛されキャラです。榎本さん、ありがとうございました。