蜘蛛の妖怪が糸を投げまくり。能舞台が糸まみれに!
演劇企画課のKさんにお話しを聞きました。
―― Kさん、よろしくお願いします。芸術の秋ですが、Kさんは概ね毎月一本、能の公演を担当しています。忙しいですね。
Kさん ありがとうございます。恐縮です。
手前味噌ですが、りゅーとぴあの能楽堂は、能楽師の方や県外からお越しになったお客様から「良い能楽堂だね」と言われることが本当に多いのです。自慢の能楽堂に、多くの皆さんに気軽にお越しいただきたく、月に1回は能の企画を開催するよう心がけています。
―― お褒めの言葉、ありがたいですね。スタッフとして身が引き締まります。さて今日はどんな公演をご紹介いただけますか?
Kさん 11/25(土)に開催される「若手能楽師に聞く 能の楽しみ」です。イケメン能楽師4人組と歌人の梅内美華子さんが、能の楽しみ方をお伝えしていく能楽講座です。
―― お客様の「知りたい」「分からない」にお応えする公演ですよね。お客様からの評判がとても良いです。
Kさん 能は鑑賞する中で、疑問や知りたいことが多く出てくる芸術です。「ストーリーの背景は?」「あの美しい衣裳の名前は?」などなど。この若手講座では、そんな思いにお応えすべく、お話と実演を交えながら分かりやすく紹介していきます。
―― 今年度のテーマは“鬼”なんですよね。
Kさん はい。「最初に観るなら鬼の能」と言われるほど、初心者の方にもおススメです。
能の魅力の一つは美しい舞なのですが、同時にそれは私たちを眠りに誘う魔力があるんですね(笑)。鬼の能は舞がなく、かわりに鬼が暴れまくるので眠くなりません。能のダイナミックかつ美しい暴れ方は、見ていて心がスカッとします。最後に鬼が退治されるのが残念なくらいです。
―― 鬼というと“鬼のパンツと金棒”を想像しますが、能の場合はそうじゃない。
Kさん ええ。鬼も能装束(着物)を着て登場します。ですが、普通の装束とはちょっと違っていて、「俺は鬼だ」と主張するパンクな能装束が楽しいです。前回の若手講座で行ったお能「雷電」では、雷の神様の鬼で、キラキラ・ゴールドの火焔太鼓文様がすてきな袴でした。
―― 装束を見るのも楽しみの一つですね。さて、今回の演目を教えてください。
Kさん 「土蜘蛛」(つちぐも)というお能を上演します。鬼退治伝説で有名な源頼光(みなもとのよりみつ)の前に現れた怪しげな男の正体が蜘蛛の妖怪です。
「土蜘蛛」という能は、細かいこと抜きでエンターテイメントとして楽しめる要素が満載の作品です。何といっても、蜘蛛の妖怪が糸を投げかける演出が、まるでショーのようです。妖怪がジャンジャン糸を投げまくって、能舞台が糸まみれになるのがこの能の見どころ。今回、「土蜘蛛」後半部分の一部が実演される予定です。
―― 能舞台が糸まみれってスゴイですね。ちなみに私、蜘蛛が苦手なんですが大丈夫でしょうか?
Kさん 大丈夫ですよ。蜘蛛の着ぐるみで登場するわけではないので安心してください。ただ、「蜘蛛の巣」の舞台セットがとても秀逸なので、これはご覧いただきたいです。能楽師の皆さんが繊細に作った巣の仕掛けを、蜘蛛の妖怪がバリバリっと破って登場するのが楽しいですよ。
―― 見どころ満載ですね。
Kさん 他にも、歴史ファンにはおなじみの頼光四天王(源頼光に従事した4人の優秀な人物。あの金太郎もその一人)や、大人気ゲーム「刀剣乱舞」(とうけんらんぶ)に登場する名刀・膝丸(ひざまる)が出てくるなど、ご紹介したいエピソードがたくさんあります。
―― 若手能楽師シリーズは毎回ゲストが来られます。今回のゲストは。
Kさん ワキ方能楽師の村瀬慧さんです。村瀬さんは、4人の若手能楽師と同世代の、現在活躍中の方です。鬼の能では、鬼と対決する役がとても重要です。その役をつとめるワキ方の能楽師が、今回のゲストというわけです。
―― 歌人の梅内美華子さんも、いつものように登場されますか。
Kさん はい。美貌の新進気鋭の歌人・梅内美華子さんが案内役として登場します。「土蜘蛛」は面白いエピソードの宝庫ですが、梅内さんがひとつひとつ丁寧にご紹介してくれます。
―― 最後にHPをご覧の皆さまに一言お願いします。
Kさん この講座シリーズ、毎回「本当におすすめです」と申し上げていますが、いつも出演者の皆さんが私の想像の1.5倍ほど上回る内容と芸を見せてくれます。能のエンタメ要素が結集した「土蜘蛛」に、どうぞご期待ください。
―― ありがとうございました。