【シャンポーの森で眠る】日記 vol.2 戸中井三太さん(演出)インタビュー
こんにちは!「シャンポーの森で眠る」ボランティアスタッフの神田萌子です!
前回の日記vol.1では、作品紹介をさせていただきました。
【シャンポーの森で眠る】日記 vol.1 作品紹介
今回からは、この作品に関わるヒト、モノから見どころをお届けしていきますよ!
スタッフやキャストなど、大勢が関わるこの作品。演出や音楽から見るスタッフ、実際に表現するキャスト、同じ創り手でも感じることは違うハズ!両者のナマの声を聞いてみませんか?
スタッフインタビュー:戸中井三太さん(演出)
作品の見どころを知るには、やはり創っている皆さんに聞くのがイチバン。インタビューの第1弾は、演出の戸中井三太さんです。「シャンポーの森で眠る」と、演劇そのものの魅力について伺いました。それではさっそく覗き見タイムスタートです!
演出・戸中井さん(右)とヒロイン役(左)。
イメージを伝えながら演技指導。思わず熱が入ります!
―― まずは、自己紹介をお願いします!
戸中井さん 劇団カタコンベ主宰で、APRICOTの演技トレーナー兼演出を担当しています。その他、専門学校の非常勤講師、テレビCMのナレーションもしています。
―― お芝居をつくる中で、演出とはどんな役割なのでしょうか。
戸中井さん お客さんと舞台の橋渡し役です。というよりは、お客さんと脚本の間にいるのかな。脚本を視覚化することが仕事なんです。
―― 脚本を視覚化する……。
戸中井さん ドラマの芯にある面白さや魅力が、お客さんにそのまま伝わる。私が脚本を読んだ時に感じた感動を、お客さんに感じてもらう。それが理想だと思うんです。
―― 「シャンポーの森で眠る」の脚本には、「愛の妖精」という原作がありますよね。
戸中井さん 今回、はじめに原作を読み込んでから脚本に入っています。でも、脚本はミュージカル用に再構成されたものなので、原作とは色合いが違う。
―― どんなお話なのでしょうか。
戸中井さん テーマとしては、人間の魂の再生。一人の男の、魂の再生の物語なんです。それがちゃんと実現された時、多くの人にとってはある種の救済になるという話。でもそういってしまうと、簡単だよね(笑)
稽古場から。休憩中は、稽古での演出を記録したり、みんなで確認作業をしています。「ここ、こうやって動くんだよね!」
―― これはミュージカルですよね。ここでの歌とは、どんな位置づけなのでしょうか。
戸中井さん 歌は、ドラマをぐっと前に進める役割があるんだけど、それは構造上のものでしかないし、動きと歌が別のものかといえば、そうではないですね。
―― 作曲・音楽監督の宮川彬良さんも、常々「歌は台詞、台詞は歌!」とおっしゃっています。ミュージカルの歌は、確かにより舞台を輝かせますが、これは歌なのだと、とらわれなくていいんですね。では、「シャンポーの森で眠る」のおもしろさというのは、どういうところでしょうか。
戸中井さん これは結構、はっきりしているというか、ここ、というところがあります。面白い入れ子細工のような……箱の中にはまた箱があって、その箱のなかには箱がある、マトリョーシカのような。ちょっと不思議な現象が起きているんです。
―― 不思議な現象?
戸中井さん 世界の中には人がいて、人の中には記憶があって。記憶の中には、世界がある。中に入っていったものが、そこでまた外に戻る。だから鬼火たちは、今生きている男の前に現れて、働きかけることができる。そういう構造が、このドラマの中にはある。
―― お話は基本的に、今の世界にいる、男の中の昔の記憶を見ている、というものですよね。記憶という名の、男の中の世界を垣間見せられていたのに、いつの間にかまた今の世界を見ているということでしょうか……。
戸中井さん お客さんが、混乱せずに、おお…と観られたらいいんだけど。(笑)
大勢の役者がいる舞台。その誰もが一つとして同じ動きではありません。豊かな表現にご注目!
―― 今回、総勢約60人もの市民キャストが出演するんですよね。推しポイントを含めた作品紹介をするなら?
戸中井さん 今回は、演劇経験のない人たちも自らチャレンジして、役者になってくれているんです。なってくれたからには、ああ、この芝居に出てよかったなと思ってほしい。おこがましいことを言えば、人間として成長できてよかったな、とも。その感覚があれば、それは役者として参加してもらったことになる。
60人全員でつくる芝居なんですよ。役がある人ががんばればいいわけではなくって、全員が役割を持っていなきゃいけない。言われた通りに動くことが仕事ではないんです。
動いたり歌ったりというのが、自分の心の活動になってないと、嘘っぱちな画作りになってしまうから。
―― 心の活動。戸中井さん、稽古場で「身体の中にドラマを持っていないと。」とよくおっしゃっていますよね。
戸中井さん 最初の最初から言葉を尽くして、「このシーンはこういうイメージだから。この中には何があるの?あなた(死者)は生き返って何がしたいの?」と確認していますね。そこが空っぽになってしまうと、ルーティーンをこなしている人になってしまう。
―― 舞台上では、全てが生き物なんですね。役のない、とある一人のことをずっと追って見ていくのも、その人の人生を見ているようで面白そう!
戸中井さん それでお話も成立するはずなんです。部分を見ていてもおもしろい。色んなところで、色んなことが起きているんです。
―― この「シャンポー」、魅力がたくさんありそうな予感がしてきました。ぜひ様々な視点から観てほしい…。でも、お客様は、演劇を観に来たことがある方ばかりではないと思うんです。そんな方に、演劇の魅力を伝えるなら?
戸中井さん うーん…難しい。でも…。ここにしかないもの。このりゅーとぴあにしかないものなので、演劇を観るとか、音楽を聴くとか、映画を観るとか、そういうジャンルで考えずに、ここで起きているちょっと変な出来事を観に来てほしい。りゅーとぴあで起きているおもしろい事件を目撃してほしいです。
―― 事件!なるほど。より踏み込んでおもしろさを伝えられたら、と考えていたのですが、お話を聞いていたら、「ここがおもしろい」とか「こんな気持ちになって」とは言えないと思ってきました!
戸中井さん 観に来た人の結末を用意してはいけない。用意できるのは、世界だから。何をどう感じるかは、このお芝居を受け止める、あなたのものだから。観に来てもらうしかない。
―― 理解するとかではなく、感じてもらえたら何よりですね。(時計を見て)おっと!あっという間に終了のお時間です。
戸中井さん シーンのおすすめや詳細については、各キャストインタビューで語ってくれることでしょう。
―― 今後、スタッフやキャストにもインタビューしていく予定です。あらすじは既にお伝えしている通りですが、そこにある魅力とは何なのか、さまざまな視点から「シャンポーの森で眠る」についてご紹介していきます!最後に、本日のお相手、演出家・戸中井三太さんから一言。
戸中井さん この世界を目撃してほしい。それだけです。
―― ありがとうございました。さて、次は誰にインタビューしようかしら。次回の覗き見もお楽しみに!