25年が過ぎて見つけた25の話 #12
りゅーとぴあの大ホールと中ホール!?
文化会館のホールの名称は、大ホール、中ホール、小ホールという呼び名が一般的です。お隣りの新潟県民会館は大ホールと小ホール、新潟市生まれの故前川國男氏が設計した『音楽の殿堂』である東京文化会館も大ホールと小ホールです。なぜ、りゅーとぴあのホールの名称がこれと異なるのでしょう。実は、りゅーとぴあが開館するとき、ホールの名称の議論がされており、コンサートホールは大ホール、劇場を中ホールとする案があった、という話を聞きました。このお話をしてくださったのは、高橋建造さん。開館準備から携わり1999年春までりゅーとぴあに勤務されました。
高橋建造さん
1995年春、市民文化会館整備課(当時の名称)に配属され、職員として1998年10月開館を迎え、1999年の春まで管理業務を担当されました。その後は、新潟市役所で財政、企画部門などの要職を経て副市長として市政にご尽力されました。現在は新潟市参与です。
りゅーとぴあのホールや練習室をご利用になったことがある方はご存じかもしれませんが、申し込み方法や会場使用料について決められた“新潟市民芸術文化会館条例”という新潟市が定めたルールがあります。
新潟市民芸術文化会館条例
(設置)
第1条 音楽、演劇、能その他の舞台芸術の振興を図り、もって市民文化の向上に資するため、新潟市民芸術文化会館(以下「会館」という。)を新潟市中央区一番堀通町3番地2に設置する。
(施設)
第2条 会館に、次に掲げる施設を置く。
(1) 音楽ホール (2) 演劇ホール (3) 能楽堂 ・・・(以下省略)
高橋さんは条例制定の担当者として、この第2条を、大ホール、中ホールとするのではなく、それぞれのホールの設計にあたって想定されたパフォーミングアーツ、つまり、音楽や舞台芸術を想起する名称とすることにこだわったそうです。
「第一に、名称から実物をイメージできることが大事です。第二に、コンサートホールは演奏会としてご利用いただく方、劇場は演劇、舞踊など舞台芸術でご利用いただく方を優先して予約を受け付ける仕組みとしていますが、施設を活かすこの条例と規則の重要な部分である優先予約の仕組みを説明するには、大ホールと中ホールでは伝わりにくいと考えました。そこで、それぞれの名称を音楽ホール、演劇ホールとしたうえで市議会から条例をご議決いただき、チラシなどに掲載する通称はコンサートホール、劇場、としました。」
このほかにも、コンサートホールと劇場の使用料を客席の一部を使用しない条件で割り引くことや、スタジオの照明を安価なセット料金で利用できることについての定めがあります。りゅーとぴあを使いこなす地域の人材を育成すること、すなわち舞台芸術の振興を描きながら作られた条例、と言えます。このことについて高橋さんは次のように話されました。
「例えば、いま活躍中の演奏家であっても、生まれて初めてあがったステージは小さなものではないでしょうか。努力と経験を重ねて、ファンが増えたり、他の演奏家と共演をしたりするようになって、大きな会場をお使いになります。りゅーとぴあでいえば、スタジオとコンサートホールの関係がこれに当たりますが、こうした多様な利用の形を、準備に携わる職員みんなで想定しながら、使いやすい施設となるよう心がけて開館準備をした記憶が残っています。」
取材の様子。今回は支配人等と一緒に伺いました。(筆者撮影)
高橋さんは1998年に私が就職した際の上司でした。社会人1年目の私は高橋さんから仕事のいろはを教わりました。いまでも肝に銘じている言葉がいくつもあります。今回は取材のテーマにとどまらず、管理運営について様々なお話を伺いました。今後やるべき仕事が見つけられたことは大きな収穫です。
25年が過ぎて見つけた25の話#12 ホールの名称を検討した時期に、コンサートホールを大ホール、劇場を中ホールとする案があった。
おわり
『25年が過ぎて見つけた25の話』アーカイブ
#1 ロゴマーク
#2~#5 設計編
#6~#8 建設工事編
#9~#11建設工事その2
関連リンク
りゅーとぴあマガジン 2024 Autumn/Winter vol.75 に”日本建築家協会「JIA 25年賞」を受賞”が掲載されました。