25年が過ぎて見つけた25の話 #15
先日はりゅーとぴあコンサートホールで“5台ピアノの世界”がありましたね。りゅーとぴあにはフルコンサートピアノが6台あるほか、ティンパニ、バスドラム、スネアドラム、マリンバ、シロフォン、グロッケン、ゴング、シンバル・・・といった打楽器もあります。そして、隣りの新潟市音楽文化会館(音文)はりゅーとぴあよりも多く楽器を取り揃えています。前回の“25の話”では、寺田尚弘さんが「全国の公共ホールの中でも保有楽器の種類や数は一番多いんじゃないかな」とお話されました。今回も寺田さんから伺った話のつづきです。
もう一つ聞きたかったテーマがあるのですが、自主事業の話をお聞かせいただけますか。“新潟市音楽文化会館30年のあゆみ”には音文は開館したときから自主事業をやっていたことが書かれています。寺田さんが入った年(昭和58年度)は3つの公演をしていました。
「その年の事業は私が入った時はすでに決まっていました。」
寺田さんの企画した事業は翌年(昭和59年度)からということですね。この年は、
6月27日 ウィーン・ムジーク・フェライン弦楽四重奏団
10月17日 ジェームス・トッコ ピアノ・リサイタル
11月8日 コスモムジク’84演奏会(ピエール・ティボー他)
“新潟市音楽文化会館30年のあゆみ”から引用
をやったのですね。
「音文では開館以来、限られた予算の中で、邦人演奏家による鑑賞事業を行ってきましたが、たまには知名度のある外来演奏家もやってみようと思い、“ウィーン・ムジーク・フェライン弦楽四重奏団”を入れてみました。ライナー・キュッヒル(当時ウィーンフィルのコンサートマスター)が主宰のカルテットです。この公演はとても喜んでもらえました。もう一つ、新潟市は吹奏楽が盛んだったので、金管楽器のスーパースターによるアンサンブル“コスモムジク”を取り上げたのですが惨敗でした。吹奏楽をやっている人たちは演奏会には行かないんですね。中学校の音楽の先生方に営業に行きましたがイマイチ反応が・・・」
営業に行ってたんですか!
「もちろんです。それ以外にも企画書を持って新聞社を訪ねて記事にしてもらったり、チケットをプレイガイドに配券に…小さいホールなので必要な仕事はすべて一人でやってきました。」
すごいですね!
「当時はどこのホールも同じ感じだったと思います。事業はみな少人数でやっているので。」
音文の15年間を振り返ってみてどうですか。
「いろいろなことがありましたね。時代の移り変わりも感じました。りゅーとぴあが出来る前(1980年代)、新潟市のホールは“音文”と“公会堂”だけでした。40万都市としては少し寂しいかな。ただ、隣にある新潟県民会館が“新潟市民会館”みたいな存在だったので。県民会館の事業は、オーケストラ、歌舞伎やバレエなど大規模なものをやっていたので、音文は何をやればいいのかと考えたとき、ホールの規模からして“室内楽”かなと。それでピアノ、弦楽四重奏などをとりあげてみると、そこそこ需要があって、そのうちお客様の顔が見えるようになってきました。何人かから話を聞いてみると『世界的な演奏家を呼んでほしい』と。つまり、多くのお客様が求めているのは、ある程度知名度があってレベルも高い演奏家ということなのかな、と。それまではずっと1,500円の固定料金で行っていましたが、入場料金を上げて収入を増やすので、事業規模を大きくさせてほしいと、館長と一緒に財政課にお願いに行き、絶対に赤字を出さないことを条件に鑑賞事業の拡大を認めてもらえました。おかげで、『世界的に活躍している演奏家を聴きたい』というニーズに応えることができたのです。」
それで事業はどんな風に変わりましたか。
「“キングズ・シンガーズ”(昭和62年1月)や“アルバン・ベルク弦楽四重奏団”など、それまででは考えられなかった演奏家を招聘することができるようになりました。」
25年が過ぎて見つけた25の話 #15 事業の規模に合わせてチケット料金を設定する形態は1985年(昭和60年)から始まった。
話はまだまだ続く模様でしたが、ここで時間切れとなりました。インタビュー当日は、ご自身が出演する演奏会があったためお忙しいなかインタビューに答えていただきました。
“25の話 #15”は、今となっては当たり前のことですが、こうした過去の出来事が現在の仕事になっていることが分かる良い事例です。寺田さんの仕事ひとつひとつが現在まで引き継がれています。
伊藤さんと寺田さん
おふたりはりゅーとぴあの事業企画で長年一緒に仕事をされていました。伊藤さんは現在の事業企画部音楽企画課長です。今回のインタビューは、伊藤さんが同席するなら、ということで実現しました。
おわり
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