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25年が過ぎて見つけた25の話 #18

「新潟から世界へ」の必然①

今年6月、JIA25年賞の表彰式にりゅーとぴあの設計者:長谷川逸子さんと出席しました。その際のスピーチで、長谷川さんは建設中に人材育成のワークショップを行ったことを紹介しました。今回は、過去の資料と受講者へのインタビューからこのワークショップについて探ってみます。

最初に、ワークショップの募集要項を読んでみます。
 【表紙】N-pac Workshop 新潟市劇場芸術講座 1994年9月開講 今秋、新潟に音楽・舞台芸術の企画運営スタッフ=現場人(げんばびと)のための人材養成講座が開講します。
2ページ目には趣旨が載っています。
 現在、さまざまなところで文化会館の建設が進んでいますが、文化活動を進めていくにあたってはそれを企画運営していくスタッフは全国的に不足しており、質の高いスタッフを養成することは急務であり、大変重要なことです。(中略)この講座を通してより深い芸術への理解と興味、そしてそれを企画運営していくための知識と技術を実際に活動している講師と共に学び学習を行うことを通して身につけていただき、講師の方や多くの受講生同士の人材ネットワークを形成して、現場で役立てていただくことがこの講座の最大の目的です。

 講座期間は1994年9月から1997年3月(3ヵ年)
 原則として毎月1回(土日連続2日)新潟市にて開催
 募集定員 50名
 受講料 年2万円
 提出書類 
  a.履歴書 
  b.作文1題(2題のうちいずれかのテーマで作文)
   「パブリックホールについての考え」
   「自分の将来の夢について」

募集要項には、講義概要の記載もありますが量が多いのでここでは抜粋します。
・音楽史、演劇史
・スタッフ理念 制作とは何か ホール運営の現状と課題 音楽、演劇、ダンス、芸能におけるディレクションの進め方
・公演と社会 社会貢献と芸術 アートマネジメントの現在
・制作技術 企画実現へのステップ 発券、記録、広報 コンピュータ術
・舞台考現学 アテンド ケイタリング 受付 道具学
・ステージワーク 舞台機構 音響 照明 美術 
・ステージのワークショップ 舞台監督の一日 

うーむ。充実した内容です。これを全部理解すれば即戦力になれますし、今の私が受講しても学ぶことがたくさんありそうです(叶うのであれば受講してみたい…)
これ程に魅力的な講座だけあって、全国各地から応募があったそうです。

 

25年が過ぎて見つけた25の話 #18の画像
募集要項のカバー。講座のプリントを綴るため、これと同じデザインのファイルが受講生に配られたそうです。

 

ワークショップのお話を伺ったのは、りゅーとぴあ事業企画部の坂内佳子さんです。坂内さんはりゅーとぴあ職員の中で唯一のN-pac Workshop 受講生です。今回、坂内さんがうれしいお土産を持ってきてくれました。

「りゅーとぴあの書庫に“N-pac Workshop”と背表紙に書かれたファイルがあるのが以前から気になっていたのですが、ついに手に取ってみたんです。そしたらワークショップの写真がたくさん残っていました!懐かしいです。」
――うわー、知っている方が何人かいます。みなさん若いですね(笑)。最初に応募したきっかけを聞かせてください。
「当時は民間のホールに勤めていましたが、実質的に私一人で切り盛りをしていました。開館から1~2年経った頃で、前任者から引き継ぎを受けたもののノウハウがなかったのでこのワークショップを上司から勧められました。会社が受講料を出してくれるということもあり、面白そうだったので応募しました。応募時に論文を書いたのは覚えています。私は”受講生”として受講しましたが、これとは別に”聴講生”という人もいました。そして、いずれからも漏れた人もいたようです。」
――どのような方が受講していましたか。
「年齢も職業もさまざまでした。講義が終わった後はみんなで飲みに出かけたりしました・・・」

 

このときのエピソードは、次回詳しく書きたいと思います。

今回の締めくくりに、募集要項に載っている長谷川逸子さんの文章を紹介します。
文の冒頭と文末を原文のままここに載せます。
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パブリックホールづくりは人づくりでもある
 (仮称)新潟市民文化会館の設計作業を進めながら、私は新潟市がこの施設によって日本だけでなく世界から注目されることになると確信し始めています。
 (中略)
 〈自治体と文化〉の活動は日本にあって、21世紀の社会に向けて完成させていかなくてはならない課題です。公会堂、公民館、市民会館と次第に名称を変えつつ、公共ホールは市民の文化生活に合わせて変容しながら建設されてきて、今日ようやく本格的なパブリックホール建設時代を迎えつつあります。その中にあって、この人づくりの講座の果たす役割もまた極めて重要であると確信しております。
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25年が過ぎて見つけた25の話 #18 1994年9月から3ヵ年に渡り開催された劇場芸術講座(N-pac Workshop) は全国から注目を集め、企画運営スタッフを育成する講座が行われた。

 

 

25年が過ぎて見つけた25の話 #18の画像

坂内佳子さん(写真中央。N-pac Workshopで作業中の様子)
だいしホール、新潟県文化振興財団を経て、2015年からりゅーとぴあに勤務。現在は事業企画部舞踊企画課長として、主にNoismの企画制作を担当しています。

 

 

JIA25年賞の表彰式がりゅーとぴあマガジン (PDF6ページ目)に掲載されています。ぜひご覧ください。

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