25年が過ぎて見つけた25の話 #19,#20
「新潟から世界へ」の必然②
前回に続きN-pac Workshop 新潟市劇場芸術講座の話です。
資料によると、3ヵ年に渡ったこの講座には40人以上の講師が登場したようです。このことについて坂内さんに話を聞きました。
「演劇の舞台監督、歌舞伎の制作をしている方、オーケストラのステージマネージャーなど、各分野の一線で活躍中の方ばかりでした。」
印象に残っていることは?
「全体を通して学んだのは、コミュニケーションの重要性。それから”トラブルがない仕事はない”ということ。何度打たれてもそれでも前へ進める、ということですね。」
今がまさにそうですね(笑)。
「そして、新しい文化が生まれるときは“熱狂”の人が存在するということ。どれも刺激的な講義でした」。
「あとは、目隠しをして街中を歩く体験をしました。舞踊家の田中泯さんが講師でしたので、視覚以外の身体感覚を知るという感じの講義だったと思います。泯さんにはWorkshopの卒業制作公演にも関わっていただきました。」
視覚健常者が目隠しをすると完全に遮断されたようになりますが、それはきっと視覚障がい者が感じていることとは異なりますよね。と、いうのは、私がりゅーとぴあで視覚障がいのお客様を案内するときに、健常者が持っていない感覚を持っているように感じたことがあるからです。
「それはあると思います。Noismのワークショップでメンバーが視覚障がいの方の手を触れた時、繊細な感覚に驚いたそうです。視覚障がい者は私たちが使っていない感覚が研ぎ澄まされているようです。」
すみません、話が逸れてしまいました。他にはどのような講座がありましたか。
「新潟テルサで行われたバレエ教室の公演で舞台監督の仕事を学ぶ実地研修を行いました。舞台の仕込みで、リノリウムを敷いて、照明を吊るし、ほかにも、影アナを担当しました。また、サントリーホール、国立劇場、長谷川逸子さんが設計した湘南台文化センターなど県外での実習もありました。」
富永さん:坂内さんは仕事に対する考え方のバランスが良いと前から思っていたのですが、このワークショップで学んだことが影響しているのでは。
「講座は、音楽、演劇、舞踊、古典芸能の制作から、裏方の仕事まで、いわば劇場の仕事の全てを網羅していました。これまでの職歴では、音楽とオペラの制作をやり、今は舞踊の制作ですので、あの時学んだことが全て今につながっていると思っていますし、あの時学ばなければ、りゅーとぴあのスタッフにはなっていなかったのではないかと思います。」
「当時のことを記録した書籍※があって、読みながら開校式で聞いた長谷川逸子さんの話を思い出しました。その理念は今読み返しても素晴らしいものだと思います。」
施設に関係するところ拾い上げてみました。
・コンペの構想書では、コンサートホール、劇場、能楽堂を分散して造ることを想定しているように読み取れたが、これらをひとつの建築とした。
・ひとつの建築にするのは、音響ひとつとってみても高度な技術が必要となる。
・新潟にどこにもない建築を作る、そうでないとここから世界へ向けて発信できない。
・独特な「何か」が生まれるために3つのホールを卵形に入れる思い切った形式をコンペで提案した。
出典 “スーパースタッフvol.1アート・マネジメントの現場 ドキュメントN-PAC Workshop”ペヨトル工房
今回、私が見つけたのは、「りゅーとぴあは卵」ということ。確かに上から見ると卵の形をしています。また、25の話#10では卵形にするための建設技術の話を伺いました。しかし、私が知りうる限りの資料には、”卵”をいう文字は見かけたことがなかった故、この形は卵形ではない、と思っていた・・・これは大きな勘違いでした。
これともうひとつ。世界へ向けて発信する、ということについて。建物の姿形もない、もちろんオープニング事業も決まっていない時期に「新潟から世界へ向けた発信」の一歩を既に踏み出していたのです。
25年が過ぎて見つけた25の話#19 独特な「何か」が生まれる卵、それがりゅーとぴあ。
25年が過ぎて見つけた25の話#20 設計の時点で新潟から世界へ向けて発信することを掲げていた。
坂内佳子さん(右)と富永広紀さん(左)と仕事に関係するモノ“商売道具”
坂内さん:りゅーとぴあ事業企画部舞踊企画課長でりゅーとぴあ職員で唯一のN-pac Workshop受講生です。商売道具はNoism20周年のポスターです。
富永さん:りゅーとぴあ事業企画部広報営業課長。JIA25年賞では、応募から表彰式まで私と二人三脚で歩んできました。商売道具は、Nikonのカメラ、りゅーとぴあ思い出ブック、書籍、ブタ(何に使うのだろう?)
『25年が過ぎて見つけた25の話』
#1 ロゴマーク
#2~#5 設計
#6~#8 建設工事
#9~#11 建設工事その2
#12 条例
#13,#14 楽器
#15 自主事業
#16,#17 敷地
#18 「新潟から世界へ」の必然①
富永さんが編集しているりゅーとぴあマガジン にJIA25年賞が掲載されています。