Special interview 沢口靖子-世間知らずで正義感の強いヒロイン・秋子。実際の私に似ているかもしれませんね
秋子が変わっていく姿に共感したり、笑ったりしながら
「自分ならどうするだろう?」と考えさせてくれる作品です
夫の失業によりスーパーマーケットでパートを始めた元セレブ主婦の秋子が、周囲に影響され、変化していく姿をユーモラスに描く舞台『パートタイマー・秋子』。社会派コメディで知られる二兎社主宰の永井愛さん作・演出の舞台だ。秋子役で主演を務める沢口靖子さんに、意気込みを語ってもらった。
沢口靖子 SAWAGUCHI Yasuko
1984年『刑事物語 潮騒の詩』でデビュー。85年、NHK連続テレビ小説『澪つくし』で全国的に人気を博し、以降、数々のドラマ・映画・舞台に出演。代表作としてドラマ『科捜研の女』、『鉄道捜査官』、『警視庁機動捜査隊216』、『検事 霞 夕子』、舞台『蔵』(95年・芸術座)、『細雪』(2000年・帝国劇場)、『Bad News☆Good Timing』(01年・パルコ劇場)、『シングルマザーズ』(11年・東京芸術劇場)、『熱海五郎一座』(14年・新橋演舞場)、『台所太平記』(15年・明治座)など。デビューから今日まで映像、演劇、CMなど幅広い分野で活躍を続けている。第23回橋田賞、第24回菊田一夫演劇賞受賞。
―2011年の舞台『シングルマザーズ』以来、二度目の永井愛さん作・演出作出演ですね。
もう一度永井さんの舞台に出演できたら、と強く願っておりましたので、お声がけいただき本当にうれしかったです。『シングルマザーズ』のお稽古では、永井さんが膨大な資料を基に練り上げられたせりふやト書きの一つ一つに対し、エピソードを交えて分かりやすくご指導くださいました。明確なイメージを持ってせりふを伝える大切さが実感できた、貴重な経験です。私は「質問魔」で(笑)、休憩時間まで永井さんを追いかけて質問していましたが、台本をお書きになった方ですから、的確なお答えをいただけてありがたかったです。気持ちを常にクリアにして役に向き合えました。
―今回の『パートタイマー・秋子』では、夫の失業で働かざるを得なくなった元セレブ主婦の秋子役です。
秋子は世間知らずで正義感が強い人。そこは自分と似ているかな(笑)。私はここ最近、警察関係のきりっとした役が続いているのですが、秋子が家庭の主婦で母親として長年過ごしたからこそ自然に身に付いている丸みや温かさを表現したいです。さらに、自分の働きに家族の生活がかかっている切実さも意識しながら演じたいですね。コミカルな部分も随所にありますが、作為的に笑わせようとするのではなく、秋子なりの価値観や人生観をお客さまと共有できれば、自然な笑いにつながるのではないでしょうか。
―秋子のパート先のスーパーは、とんでもない「ディストピアな世界」という設定ですね。
不正がはびこっていて、同僚たちは疲れ切っている環境。そんな中で、個性的な人たちとコミュニケーションをとるうちに、秋子の価値観が次第に変化する過程がユーモラスに描かれていて面白いです。秋子に大きな影響を与える同僚・貫井役の生瀬勝久さんとは、約20年前の三谷幸喜さん作・演出のコメディ舞台と、2年前のリーディング舞台で夫婦役。とても熱くて表現力豊かな方ですので、やりとりが今から楽しみにです。またスーパーを訪れる訳ありのお客さんを演じる石井愃一さんは、NHK朝のテレビ小説『澪つくし』などでご一緒した大先輩。いろいろ学ばせていただきたいです。
―映像作品だけでなく舞台でも長年活躍されています。舞台の魅力は。
毎回違うお客さまに、舞台で起きた生の感情をお届するのは楽しいですね。役に慣れ、感情の鮮度が失われないよう努力しています。舞台は全身を使っての感情表現。客席の隅々にまで響く発声練習や、体力づくりは欠かせません。ベストの状態でお仕事に向き合うため、普段から食事や生活リズムを整え、ウオーキングをするなどアスリートのような毎日を送っています。
―りゅーとぴあのお客さまへのメッセージを。
新潟は舞台『蔵』で盲目の少女・烈を演じた30代の頃に何度もキャンペーンで訪れましたし、実はここ数年、新潟産コシヒカリを取り寄せて毎日食べているんですよ。13年ぶりに新潟にうかがう舞台『パートタイマー・秋子』は、個人の尊厳や自由が損なわれる世界で「あなたならどうしますか?」と問いかける社会派コメディです。ぜひ劇場に足をお運びください。
取材・文/本間千英子
撮影/本間伸彦
ヘアメイク/胡桃沢和久(Iris)
スタイリスト/竹上奈実
アクセサリー/ボン マジック(tel.03-3303-1880)