吹奏楽ファン必聴！日本が世界に誇るプロ吹奏楽団の記念公演。

出演

指揮：大井剛史（正指揮者）
演奏：東京佼成ウインドオーケストラ

プログラム

G.ホルスト：吹奏楽のための第一組曲
芳賀 傑：水面に映るグラデーションの空
P.グレインジャー／F.フェネル校訂：リンカンシャーの花束
保科 洋：吹奏楽のための交響曲第3番(TKWO委嘱新作)ほか

創立60年に発生する、日本音楽界、本年最大の“事件”！

富樫鉄火（音楽ライター）

東京佼成ウインドオーケストラ（TKWO）は、1960（昭和35）年に結成された。設立時の団員数は「15名」。しかも楽器経験者はたった1人。ほとんどが楽譜も読めない若者たちだったが、戦後の日本に新しい吹奏楽の響きを根づかせようとする情熱は、次第に実力となって花開き、団員も増えていった。
1960年代の吹奏楽界といえば、まだ、マーチやクラシック名由ばかりを演奏していた時代である。しかしTKWOは、それらばかりではなく、一般には知られていない内外のオリジナル名曲を次々と発掘し、初演した。かくして日本吹奏楽界のレパートリーは、一挙に広がったのである。
指揮者陣も、クラシック界のみならず、海外から一流どころを続々と迎えた。そのひとりが、1984年に同団の常任指揮者に就任した、フレデリック・フェネル（1914～2004）である。彼は1950年代に、米イーストマン音楽院でウインド・アンサンブルを結成し、現在のような理想的な楽器編成を確立させていた。さらに埋もれていた名曲を続々発掘。ホルストの≪第一組由≫≪第二組曲≫、さらには、グレインジャーの≪リンカンシャーの花束≫といった名由は、フェネルによって広まったといっても過言ではないのだ。
TKWOが創立60年を迎えた今年、それらを、同団の正指揮者・大井剛史が、再び甦らせる。特にホルストの≪第一組曲≫は、フェネル自身が「吹奏楽を指揮するものは、この曲のスコアとともに生活せよ」とまで述べた“聖典”だ。初演からほぼ100年、いまや古典となった名曲群を、どのように響かせてくれるのだろうか。
今回は、古典だけでなく、吹奏楽最前線の曲も登場する。まずは注目の若手、芳賀傑の≪水面に映るグラデーションの空≫だ。2018年にフランスで開催された、第六回クー・ド・ヴァン国際交響吹奏楽作曲コンクールで第一位と聴衆賞を受賞した最新名曲だ。
そして今回最大の注目は、日本音楽界の至宝、保料洋による、TKWO創立60年記念委嘱作品、≪交響曲第三番≫が初演されることだろう。2016年、作曲者80歳の記念に書き下ろされた≪交響曲第二番≫は、「吹奏楽編成で書かれた交響曲の最高傑作」の声もあった。あれからわずか4年、早くも第三番が登場し、しかもそれが、大井剛史&TKWOによって初演されるというのだから、驚き以外のなにものでもない。まさにこれは、日本音楽界における本年最大の“事件”である。吹奏楽ファンのみならず、すべての音楽ファンが立ち会わなければならない、歴史に残る演奏会になるにちがいない。（敬称略）