ドラマチックな能「海士」が登場。
伝統様式の能楽堂で能と狂言を堪能！

内容

仕舞「屋島(やしま)」　観世三郎太
仕舞「楊貴妃(ようきひ)」　山階弥次
狂言「清水(しみず)」　山本泰太郎
能　「海士(あま) 懐中之舞」山階彌右衛門

撮影：前島吉裕

亡母ゆかりの地を訪れた大臣・藤原房前の前に、母と名乗る海士が現れる場面から始まる能「海士」。我が子を藤原氏の世継ぎにするため、海士が命を投げうって竜宮から宝を取り戻す場面など、謡どころ舞どころが多い人気曲です。子のために命をかけた母の強い愛情が描かれる前半、成仏した母の霊が龍女となり颯爽と舞う後半とも見どころ満載の能をお楽しみください。

あらすじ

連吟「山姥(やまんば)」

山姥の山巡りを得意とする京都の遊女・百万(ひゃくま)山姥(やまんば)の一行が善光寺参詣の途中、越後国・上路(あげろ)（現在の糸魚川市上路）の山中で、山の女に一夜の宿を借ります。女は自分こそ真の山姥であると明かし姿を消します。その夜、真の姿で現れた山姥は、遊女の謡にあわせて舞を舞い、深山の光景や山姥の境涯を語り、山巡りの様子を見せ去ります。

仕舞「屋島(やしま)」

讃岐国(さぬきのくに)・屋島浦を訪れた旅僧の一行が、老漁師に一夜の宿を借ります。旅僧に促され、老漁師は屋島での源平合戦の様子を詳細に語ります。老人は屋島合戦で活躍した源義経の幽霊でした。その夜、僧の夢の中に甲冑(かっちゅう)姿の義経の霊が現れます。義経の霊は、屋島合戦の有様を再現し、修羅道での凄まじい戦いの様子を見せ、夜明けとともに消えていきました。

仕舞「楊貴妃(ようきひ)」

唐の玄宗(げんそう)皇帝の命を受けた方士（仙術を使う者）が、蓬莱宮(ほうらいきゅう)（中国の伝説の仙界）で亡くなった楊貴妃の魂魄を探しあてます。方士が皇帝の深い嘆きを伝えると、楊貴妃は皇帝と交わした比翼(ひよく)連理(れんり)の誓いの言葉を伝え、玄宗皇帝との思い出の舞を舞います。

狂言「清水(しみず)」

太郎冠者が主人に茶会で使う水を清水で汲んでくるように命じられます。行きたくない太郎冠者は、清水で鬼に襲われたふりをして帰ってきます。主人は太郎冠者が置いてきた大事な手桶を探すため、自ら清水に向かいます。嘘がばれないよう太郎冠者は先回りをして、鬼の面をかぶって主人を脅しますが…。

能「海士(あま)」

藤原淡海(たんかい)公（不比等）の子・房前(ふさざき)の大臣は、亡き母の追善のため讃岐国(さぬきのくに)（香川県）・志度(しど)の浦を訪れます。大臣一行が、通りかかった海士に海松布(みるめ)（海藻の一種）を刈るように命じると、海士はこの浦の昔の出来事を語り始めます。かつて唐から贈られた宝珠が龍神に奪われ、それを取り返すために身分を隠してこの浦に来た淡海公が、契りを交わした海士に宝珠奪還を命じます。生まれた子を世継ぎにするという約束に、海士は海に潜り竜宮から宝珠を盗み、乳の下を切り裂いて珠を押し込めて戻ったという様子を海士は物語ります。海士は自分こそその海士、房前の母だと名乗り、海中に消えます。大臣が供養を営むと、龍女となった母の霊が現れ、成仏を喜び経文を唱え、舞を舞います。