直木賞受賞作家・恩田陸の小説「大きな引き出し」を原作に描いたファンタジー・ストーリー。

原作：恩田陸『大きな引き出し』　（集英社『光の帝国』所収）
脚本・演出：成井豊＋真柴あずき

キャスト：関根翔太　森めぐみ　鍛治本大樹　小林春世　毛塚陽介　金城あさみ　竹鼻優太
ゲスト：原口健太郎（劇団桟敷童子）　家納ジュンコ

＜ストーリー＞

小学4年生の春田光紀には、読んだものを「しまう」力があった。古事記も枕草子も平家物語も、一度読んだだけで完璧に暗記できるのだ。実は、光紀の両親も、姉の記実子も、同じ能力を持っていた。記実子は中学1年生で、近頃はシェイクスピアの原文を「しまう」のに凝っている。10月、光紀は学校から帰る途中で、一人の老人が道端に倒れるのを目撃する。慌てて駆け寄り、老人の肩を支えると、様々な映像がドッと流れ込んできた。それは、老人の七十年に及ぶ、人生の記憶だった。

成井豊

今回のグリーティングシアターは、『光の帝国』です。この作品は、恩田陸さんの連作短編集『光の帝国』（集英社文庫）に収録されている『大きな引き出し』を舞台化したもので、初演は2009年。今回が8年ぶり、2回目の上演になります。初演は上演時間が60分の短編演劇でしたが、今回はこれを90～120分の長編に作り直します。主人公の「春田光紀」は関根翔太。入団5年目にして、ついに主役に挑戦です。ゲストに原口健太郎さんと家納ジュンコさんをお招きして、全く新しいキャストで、新しい『光の帝国』に挑みます。ご来場を心よりお待ちしています。

恩田陸

数年前、紙問屋の社長さんと話していた時に「記録媒体として何がいちばん優れているか」という話になった。社長さんは「和紙に墨で書いたもの」と即答した。なぜならば、歴史が既にそのことを証明しているから。確かに、初めてワープロとフロッピーディスクが登場した時は、これがこれからのスタンダードになると思ったのに、その寿命は短く、たかだかここ二十年くらいのあいだに、めまぐるしく記録媒体が現われては消えていった。しかも、それらに書き込んだデータは予想以上に劣化のスピードが速く、いつ消えても不思議ではないのだそうだ。おまけに読み出す機械と電力がなければ、中に何の情報が入っているのかすら分からない。だとすれば、世界から文明が消滅した未来、やはり常野一族の末裔がかつての人類の取ってきた方法通り、こんなデジタル技術の時代などなかったかのように、人々の記憶を伝えつづけているのかもね、と思う今日このごろなのであった。

「光の帝国」2009年　(C)伊東和則

ツアースケジュール

［東京］10/4（水）・5（木）シアター1010（北千住）
［東京］10/7（土）・8（日）たましんRISURUホール 大ホール（立川）
［埼玉］10/12（木）秩父宮記念市民会館 大ホールフォレスタ
［愛知］10/15（日）豊川市御津文化会館 ハートフルホール
［大阪］10/17（火）阪南市立文化センター サラダホール 大ホール
［広島］10/19（木）はつかいち文化ホール さくらぴあ 大ホール
［鳥取］10/22（日）鳥取市民会館 大ホール
［大阪］10/27（金）～29（日）サンケイホールブリーゼ
［埼玉］11/3（金・祝）所沢市民文化センター ミューズ マーキーホール
［新潟］11/5（日）りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場

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